上野千鶴子氏による東京大学の学部入学式での祝辞が大きく話題になっている。

 

私もそれを目にした時、どことなく言語化できていなかった思いを代弁してもらえたようで、胸がすく思いにかられた。

 

祝辞の中でも特に共感したのが、以下の箇所となる。

 

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あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。

 

ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。

 

そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。

 

あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。

 

世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと…たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。

 

あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。

 

恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。

 

そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。

 

中略

 

あなた方を待ち受けているのは、これまでのセオリーが当てはまらない、予測不可能な未知の世界です。

 

これまであなた方は正解のある知を求めてきました。

 

これからあなた方を待っているのは、正解のない問いに満ちた世界です。

 

学内に多様性がなぜ必要かと言えば、新しい価値とはシステムとシステムのあいだ、異文化が摩擦するところに生まれるからです。

 

学内にとどまる必要はありません。東大には海外留学や国際交流、国内の地域課題の解決に関わる活動をサポートする仕組みもあります。未知を求めて、よその世界にも飛び出してください。

 

異文化を怖れる必要はありません。人間が生きているところでなら、どこでも生きていけます。

 

あなた方には、東大ブランドがまったく通用しない世界でも、どんな環境でも、どんな世界でも、たとえ難民になってでも、生きていける知を身につけてもらいたい。

 

大学で学ぶ価値とは、すでにある知を身につけることではなく、これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けることだと、わたしは確信しています。

 

知を生み出す知を、メタ知識といいます。そのメタ知識を学生に身につけてもらうことこそが、大学の使命です。

 

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今日において、頑張っても報われない社会が存在していることは否めない事実だと思う。

 

また、自分が上野氏の祝辞に大きく共感し、感動したことも事実だ。

 

だからと言って、頑張らなかったら、頑張らない方が報われるのかと言ったらそんなことはあり得ないだろう。(無論上野氏もそのようなことは言ってはいない)

 

困難な状況にある人、厳しい境遇を過ごしてきた子どもたちと日々接している自分としては、頑張れば頑張った分だけ道は開けるし、報われる可能性は高まる。報われるまで時間がかかることもあるだろうし、例え報われなかったとしても、自身の成長にはつながる。真剣にそのように思って本人たちと向き合ってきたし、その思いは今後も変わらないだろう。

 

報われるとの思いは、夢や希望と同義であるようで、夢や希望を見出せなかったら、おそらく人間は前に進むことはできないのだから。