先日コロナ禍における緊急事態宣言が解除された。
新型コロナウィルスの感染が完全に収束するかはまだ分からないが、コロナ禍が地球規模で、多方面に多大なる影響をもたらしたことは事実だ。
アフターコロナという言葉を度々耳にするようになったが、コロナ禍を越えた後の国際社会は、従来のパワーバランスが崩れ、世界秩序の変容がもたらされることになるだろう。正直それに一抹(ではない程)の不安を感じている。それは私たちの何気ない日常にも、大なり小なり影響をもたらし、そのひずみはどんどん大きくなるだろう。
もう少し自分にとって身近な話をしたいと思う。
現在、障害福祉の領域では就労継続支援B型と共同生活援助(グループホーム)の2つ、児童福祉の領域では児童自立生活援助事業(自立援助ホーム)2箇所と児童家庭支援センターの3つ、合計5つの社会福祉事業を展開している。
職員(従業員)は令和2年4月末時点で28名。自身は現場のソーシャルワーカーとしての役割を担いつつ、法人全体および各事業所のマネジメントを担う立場にある。
コロナ禍において、当法人は今のところ、そこまで大きな減収にならないで済んでいる。行政の指針として、当法人の事業は継続要請の対象になっていたこともあるだろう。
また幸いなことに、各事業所の利用者も職員も、いずれのご家族の中にも、今のところは新型コロナウィルスの感染者が出ていない。
感染者を出さないようにと細心の注意を払い、感染予防に努めていただいた利用者、職員、そのご家族の存在があってこその結果である。また、休学中の子を持つ職員も、ご家族の協力の下、最大限シフトに穴をあけずに出勤してくれた。そのような幾多幾重の協力があってこその感染者ゼロであることを肝に銘じ、協力いただいたすべての方々に心から感謝を申し上げたいと思う。
先日自立援助ホームのある児童が、政府の特別給付金について尋ねてきた。10万円もらえるようだけど、どのようにしたら良いのかと。
その時はまだ自立援助ホーム利用者の申請手続きについて、行政(自治体)からも指針が示されていなかったが、次のように返答した。
「いま世の中には、今日明日生きるためのお金に困っている人がたくさんいて、そういった人が申請のために窓口に殺到しているみたいだ。まずはそのような切迫した状況にある人から優先的に申請する必要があると思う。そうでない人が窓口に行くことで、切迫した状況の人にお金が渡るのが遅れることも考えられる。〇〇君は、ホームにいる以上食べる寝るには困らない状況にあると思うから、もう少し状況が落ち着いてから申請するようにしよう。給付金がもらえなくなるということは決してないと約束するから。」
それには本人も理解を示してくれた。そしてこちらもそれに謝意を示した。
前述したように、当法人はコロナ禍において、それほど大きな減収にならずに済んだため、新型コロナウィルス感染症関連の給付金や助成金等の対象企業には該当しない。しかしアフターコロナの不透明な情勢を踏まえると、今後万が一のリスクに備えて、予備的に金融機関から融資を受けておくことが賢明なのだろう。
しかし、金融機関も当面今日明日存続するために切迫した事業者がたくさん押し寄せていることが考えられる。コロナ禍真っ只中の4月から新規事業(児童家庭支援センター)を開設するのに伴って、相応の開設費用を捻出することになったが、何とか自己資金で切り抜けることができ、すぐに金融機関に相談しなくても事業を継続できる状況は保てている。それならば〇〇君に話したように、まずは困っている人を優先することが筋であると考えている。(勿論お人よしから利用者、職員にしわ寄せが及ぶようなことがないよう肝に銘じているが・・)
社会福祉士の専門科目に「福祉サービスの組織と経営」との科目があるように、ソーシャルワークを効果的に継続的に実践するためには、組織的・経営的なマネジメント(スーパービジョンを含む)の視点が必要不可欠である。
しかしその視点は、クライエントを面前にした現場の援助実践や現場職員の立場および支援観と時に相反するようなこともある。そういった際にはすり合わせをして、最大公約数たる落としどころを探り、判断を下すことになるが、それにはジレンマが伴うこともある。ましてや自身は現場のソーシャルワーカーでもあり、経営者の立場でもあるのだから。
昨日のことになる。諸々の対応に疲れていた自分に、大恩あるいわきのTさんから次のような電話をいただいた。
「関さん、コロナの影響は大丈夫ですか。会社の資金繰りは大丈夫ですか。もしも資金繰りに困ったら、遠慮なく相談してくださいね。最大限の協力をします。」
前述したように、幸い当法人は自己資金でコロナ禍の局面を切り抜けられそうだが、何よりもその心遣いが嬉しかった。ましてやご自身も学習塾を経営されており、コロナ禍のダメージは我々よりも大きいのかも知れないのに。それを思うと、こみ上げるものがあり、疲弊していた心と身体が随分軽くなった。
アフターコロナ。世の中的に大きな変化をもたらし、様々な分野でパラダイムシフトが起こっていくだろう。
2020年は自分にとっても様々な面で節目となる年となる。そしてどのようにアフターコロナを進んでいくのか、数年後に振り返りをした際、ポジティブなフィードバックができるよう最善を尽くしていきたいと思う。
令和2年 5月31日 関 茂樹